日本における起業の現状を海外と比較すると
海外と日本の企業活動を比べてみると、日本は主要先進国の中で活動率の低い国となっています。2014年に行われた「起業家精神に関する調査」では、日本の18~64歳のうち起業しているのはわずか3.8%でした。これは24ヶ国平均である8%を大きく下回っています。
日本で企業の動きが遅れているのはなぜなのでしょうか。それには三つの大きな理由が考えられます。
一つ目は、日本では米国や欧州諸国と比べて起業するリスクが高すぎることです。日本の大手企業ではこれまで年功序列、終身雇用が当たり前でした。ところが起業するとなるとこの安定を手放さなければならなくなります。そして万が一事業に失敗して破産してしまうと、将来にわたって信頼を再び得ることが困難です。そのリスクに対し、仮に起業が成功しても、日本では資本市場が弱く米国の場合ほど大金持ちにはなれません。このように起業がハイリスクでありなかなか報われないのであれば、日本で起業することの精神的ハードルが高いこともうなずけます。
二つ目は、既存企業による競争抑止的な商慣習が日本の市場に存在することです。日本では特許の取得プロセスが資金や人材面に余裕がないベンチャー企業にとって不利であるため、既存企業との競争において不公平に働いているのです。日本のベンチャー企業が日本で特許を取るのに取得プロセスが障害となっていることで、ベンチャー企業の国内成長が阻まれてしまっています。
三つ目は、起業家育成での遅れです。経済協力開発機構(OECD)が行った「起業家教育に関する調査」では、日本は総合的に最下位でした。学校教育の中での自発性の育成や、もっと具体的な事業経営に関する教育がまだ十分にされていないと見られます。
しかし、国が不景気に陥り、会社に社員を雇用する余裕がなくなると日本、海外を問わず起業活動が盛んになる傾向があります。実際に2008年にアメリカで起きたリーマンショック時や、2011年の3月に日本で起きた東日本大震災の時にも企業活動が活発になったことが見られました。国単位でこのような大きな問題が起こると経済が安定せず、会社が人を雇えなくなるため自力で立ち上がろうと考える人が増加するのです。
日本は過去10年間で年々起業活動が増えてきています。企業の大きな不祥事や少子高齢化による老後の不安、アベノミクスのベンチャー支援、などの日本固有の情勢も追い風となっているのかもしれません。それでも新規開業の数は、アメリカ、イギリス、フランスなどの先進主要国にはまだ及びません。その理由としては上記の三つの背景以外に、日本人が基本的に積極性に欠けているとか、競争することを好まないであるとか、未だリスクを回避し安定を好む傾向にあるとか、そういった性格的な部分も関係しているのではないでしょうか。